風俗博物館~よみがえる源氏物語の世界 ~西陣織屋が金襴をさがして

去年の事ですが・・・西本願寺に用事があった日、ちょっと時間があったので「そうだ!今日は土曜日だし風俗博物館に行ってみよう」と思い立ちました。

井筒さんと言う法衣屋さんがあります。とても大きな法衣屋さんです。法衣なので色々な装束にも造詣が深く、博物館も始めはりました。

耳にしたことはあったのですが、日曜日が休館日なので中々チャンスがありませんでした。
今日は開館してはる!!井筒法衣店5階へgo!!

実は、「小さいだろうし、どうかな?」と少々不安に思いながら寄せてもらいました。が、結論としてはとても面白かったのです。

部屋にみっちりと寝殿造りのジオラマが組まれています。これが、またとても上等に出来ていて、見ごたえあります。

細かい細工まできれい。

今回の展示は~よみがえる源氏物語の世界~と題していはります。

まずは明石姫君の入内の風景~姫君の通過儀礼・婚礼~『源氏物語』「藤裏葉」より

風俗博物館~よみがえる源氏物語の世界 
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階(きざはし)と呼ばれる階段から牛車に乗り込もうと明石姫君が歩いてはる所です。

階(きざはし)とは寝殿の南面中央に位置する五級(ごしな)(段)の階段で、高欄(こうらん)が付きます。 上部には階隠と呼ぶ庇が張り出していて、賓客はここに車や輿を寄せて乗り降りします。これだけ見ても昔の偉いお方のお出かけは大変だったんですねえ。

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糸家車(いとげのくるま)は牛車の一種で、絹の縒糸(よりいと)で屋根を覆い飾り、上に金銀の文のを散らして糸の押さえと装飾をかねた身分の高い女性の乗る牛車。

小さな車なのですが、ちゃんと織りで立枠も織られて刺繍までされています。手芸好きにはたまりません。細かい技を楽しめそう♡

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お供の人の服装もちゃんとしっかり。でも牛はちょっと小さめかしら。
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寝殿は、主人の住む寝殿造の主殿で、源氏の住む六條院の御殿の場合、正面の柱間が五間、側面の柱間が二間の母屋(もや)を中心に、周囲に一間づつの廂(ひさし)が付いている。廂の外にさらに簀子(すのこ)の濡れ縁が付いて、廂と簀子の間に格子(こうし)が降りるから、廂の部分までが屋内ということになる。建物の内部は丸柱が露出した吹き放ちの空間で、塗籠(ぬりごめ)などの特殊な部屋は例外として固定された間仕切りの部屋がなく、必要に応じて御簾(みす)を垂らしたり、あるいは屏風(びょうぶ)・几帳(きちょう)などを立てて、適当に仕切って使用した。 また、床は白木の板の間で、座る場所には、畳やときにはさらにその上に茵しとねを敷いたり、簡単な場合には円座(わろうざ)を用いたりした。

~~http://www.iz2.or.jp/kizoku/index.html様から拝借~~~~~~

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男女の間に御簾が掛けられています。

御 簾(みす)とは・・・
細く割った竹を編んだもので部屋との境目などに垂らし、日の光や外部から見通されないため等に使われます。
今年もエコサマーで日の光りを遮熱して少しでも冷房の効きを良くしようと流行りましたね。もちろんそれに使われる簾よりもとても効果で美しいものが御簾です。内裏や貴人の殿舎では、文を染めた絹で回りを縁取り、上部に絹を引き渡したそうです。簾を巻き上げる際には、 「鉤丸緒(こまるお) 」という飾り房のついた半円形の「鉤(こ) 」 という金具に懸けるそうですが、『源氏物語絵巻』には鉤 も鉤丸緒も描かれていないので、模型では紐のみとした。

原文に忠実に再現してはる様でものすごく好感が湧いてきます。

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行幸(ぎょうこう)や大饗(たいきょう)、その他の晴儀の際に、母屋(もや)や対屋(たいのや)の御簾(みす)の下から女房装束の袖口の重ね色目を見せて、華やかさを演出する装飾を「打出」といいます。
実際に着飾った女房が居並んでいるように見えますが、本当は、重ねた装束を几帳(きちょう)の柱を支えにして、人が着ているように形を作って置いたものです。帳(とばり)ごと几帳を抱え込むようにして絞り、左右の袖口から出した裳(も)の紐(小腰(ごごし))で結んでとめてあります。
『満佐須計装束抄(まさすけしょうぞくしょう)』には、一間に二具の割合で置くとあるが、『駒競行幸絵巻』で描かれている打出は一間に一具と書いてあります。女房が向かい合って座っているように見える、二具を一度に用いて行う打出の場合は、左右から二組の装束を併せて絞りとめる、御簾の正面から見ると一具であるのに、左右、別々の袖口と色目がのぞくことになる。

なので上の写真にある御簾の向こうの「姫君」は人が入ってないのです。確かに、こんなかんじで所々に着物がちょっと見えていたら、華やかで美しいですが、現代の私としては「なぜあの人は動かないのだろう」って気になりそう。まあ、皆が「あれは偽でたんなる綺麗な飾りや」って知ってはったんでしょうが。

手間のかかる飾りですね。

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服を準備する女房達。

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御簾をすかして中がうっすらと見えます。

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昔は壁を作るのも大変だったのでしょう。たぶん全体的に「壁」と言う物があまりありません。

蒸し暑い夏をすごせる様に家を作るべしという京都なので夏によく風が通るように作られているのかもしれませんが、やはり隠したくなるのが人情。色んな所で装飾もかねながらの目隠しだの風除けだのが発達していきます。

発達した物の一つとして几帳(きちょう):
移動可能な室内障屏具のひとつ。 帳は反物の幅で縫い合わされたもので、縫い合わせる 時に真中を縫わずに風穴(かざあな)をあけておいて、そこから外が見られるようになっていた。
今の几帳はどうなんでしょうか。今の几帳・・・?几帳という単語は聞いたことがありましたが、私は実際に使ったり見たことはありません。かろうじて屏風は近くにあったことはありました。女性が人と対面する場合には、親しくても几帳を隔てることが多かったらしいです。

何故昔の人はそんなに隠れがちだったのでしょうか。お風呂に入らないから?歯を磨かないから?たんに恥ずかしいから?美学?昭和に生まれて平成に生きる私にはちょっと、解らないなあ。

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↑明石の姫君の「裳着の儀」の前日。
雨が少し降り、紅梅の花が盛りに咲いている六条院に蛍兵部卿宮が訪れます。そんな折に朝顔の前斎院からの使者が薫物を届けに参上しました。という図。

源氏の前には、朝顔の前斎院から贈られた瑠璃の香壺がふたつ置かれています。使者は、朝顔の前斎院からの梅の枝に結び付けられている手紙を手にしています。

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↑朝顔の前斎院からの使者には、紅梅かさねの細長を添えた女装束を与えられました。

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綺麗な着物!刺繍の着物って好き♡これはお人形さんの物ではなくて人が着られるサイズです。

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↑これは実際の窓に御簾がかかってて御簾越しに外を見てました。

ちょっと・・・思ったより見えないやないですか。こんなもんで隔たって会話しないといけないなんて一体どのような雰囲気だったのでしょうか。隠された美への想像が気持ちを燃え上がらせたりしたのでしょうか。

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↑紙を切る女房

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↑切った紙を張り合わせて模様にする女房

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↑書写をする女房

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↑紙をのりづけする女房

女房たちがそれぞれがんばって草子つくり中。花嫁道具として色々と持参しないといけないですから。でも、見るたびに思ってしまうのは、こんなに着物を重ね着して動けるのでしょうか?私、長袖を二枚着たらすでに動きづらくて困ってしまいます・・・。寒いから着ますけど。

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伏籠に装束を架けて香りを移しているところ。
自分好みに調合した練香を火取香炉で燻らし、伏籠という竹の籠を置き、さらに上に装束を架けて香を移すのです。男性は女性と面と向かって話したり出来ないのでその香の香りで人を見分ける?嗅ぎ分けたりしたそうな。残り香と言うのが大事だった時代。

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↑装束を誂える女房。

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↑鏡を見る女房と髢(かもじ=付け毛)を髪に付ける女房。

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↑菖蒲の葉を置いてあるので初夏の時期をあらわしているのでは・・・。着物の色合いもなんだかさっぱりとした初夏の色。しかし、菖蒲の時期にこんなに着てたらさぞや暑かっただろうに。綺麗ですけどね~。

 

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↑障 子(しょうじ)
襖(ふすま)・衝立(ついたて)・屏風(びょうぶ)などの総称だが、『源氏物語』 では、ほとんど「襖障子(ふすましょうじ)」のこと。
「襖障子」は今で言えば襖。上のでしたら私だったら「襖」と呼んでいます。左右の引き違い戸になっていて、鹿皮(しかがわ)の取っ手がついています。母屋(もや)と廂(ひさし) の間などに設置して隔てとして用いられたが、柱の間にはめ込んで、使わないときにははずせるように出来ています。そのほかに下に台がついてい る移動可能な襖張りの「衝立障子(ついたてしょうじ)」がある。現在の障子は「明障子(あかりしょうじ) 」といわれ、平安時代末期に現われた。

我が家には3種類の障子があります。襖障子、明り障子、ガラス障子。

毎日開け閉めしていますがこの原型が光源氏の頃からあったんですね。今、家の中にある襖を見る目がちょっと変わりました。

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明石の姫君の習字の手本となるような草子を制作中の場面です。

源氏はくつろいだ姿(=袿姿)書いている様子。そこへ源氏の弟である兵部卿宮が訪れました。源氏は直衣を着て兵部卿宮を迎えたのでした。直衣は写真左側にかすかに写っています。

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↑墨を擦る女房

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↑正装の汗杉(かざみ)の裾を長く引く女性

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純白の装束を着ている明石の姫君。姫君の前に座っている人は裳(も)の小腰(こごし=帯?)を結ぶ秋好中宮。

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↑こちらは実物大のコーナー。私は気がつきませんでしたが、奥の着物を羽織ってみてもよいそうです。

今度寄せてもらえるチャンスがあったら是非、羽織ってみたいです。

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綺麗だけど、動くの大変そう。(そればっかり書いていますね。実際、見てるだけで肩こりそうです。我が社の金襴もお坊様たちがどんどん年を召してきて「重たい袈裟はいやや」という事で「軽い物」へと変わっているのです)大変だから姫はあまり動かなくなって、大人しい優雅な姫になるのかしら。

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↑かぐや姫の世界。

絵本などで描かれるような十二単姿ではなくて奈良時代のなごりが感じられる平安初期の服装です。こちらのほうが行動的な感じです。

この博物館の面白い所は寝殿造りの御殿の中に下を潜って入っていって中から内側を眺めたり出来る事です。色んな角度から御殿の様子を眺めることが出来ます。

2013年10月現在只今の展示は『源氏の栄華を彩った三人の御子』 です。興味ありです。

風俗博物館←こちらのサイトもとても充実していますよ。

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