西陣織と
名乗れるのは誰なのか?
西陣織の定義と証紙制度

「西陣織」と書かれた帯や布地を見かけたとき、私たちは自然に「京都・西陣の織物」「伝統産地の製品」というイメージを持ちます。では実際に、その表示にはどのような根拠があるのでしょうか。

本ページでは、西陣織を名乗る根拠として重要な「証紙(しょうし)制度」を中心に、 定義・確認方法・注意点を、製織を行う織元の視点で整理します。

西陣織の全体像(産地の成り立ち・特徴)については「西陣織とは」で詳しく解説しています。

※制度の詳細(規程・運用・表示方法)は改訂される場合があります。最新情報は西陣織工業組合等の公式情報をご確認ください。

「西陣織」は自由に「名乗れる」のか?

産地名というのは、単なる地名ではなく信頼責任が紐づく表示です。 織元が自社製品を「西陣織」と名乗るうえで、購入者が現物で確認できる最も分かりやすい根拠が証紙です。

ポイントとして、西陣の製品には、西陣織工業組合が発行する“メガネ型証紙”が貼付され、 生産者番号帯地の種類等が表示されることで、製品の出自と責任が明確化できるようになっています。(メガネ証紙以外も証紙は存在します。どれも産地からトレーサビリティを追える仕組みになっています。)

証紙は、いわば「西陣としての自己申告」ではなく、制度に基づく表示です。 そのため、まずは「証紙があるか」「番号が何を示すか」を確認することが重要になります。

特に帯のような複雑な流通を経てお客様の手元に届くような西陣織は帯に縫い付けてある、もしくは貼り付けてある証紙は西陣織と証明するために重要なアイテムとなります。

西陣織工業組合 証紙 187 岡本織物株式会社
西陣織証紙 金襴 187番 岡本織物株式会社

証紙制度とは|何を保証し、何を保証しないのか

西陣織証紙が示すこと

  • 生産者番号などを通じて、製造責任の所在を追える(少なくとも“誰が責任を持つか”が明確)
  • 織地の種類など、一定の区分表示がされる
  • 制度の枠組みの中で「西陣の製品である」ことを示す

証紙だけで断定しにくいこと(誤解しやすい点)

  • 「高級」「手織り」「総手仕事」など、細分化している品質や価格帯を一律に保証するものではない。
  • 素材の内訳(例:本金・本銀・プラチナ等)や工程の詳細は、別途仕様確認が必要
  • 同じ産地でも、用途・設計・組織・分業工程・素材で表情と価格は大きく変わる

つまり証紙は、「西陣であることの確認」には強い一方で、 「どれほど贅沢な仕様か」は別の情報(仕様書・口伝・織元説明)で補う必要があります。

次の写真は「本金」の織物の証明となる本金証紙です。残念ながら西陣の中でマイノリティである「本プラチナ証紙」は組合から発行されていません。

西陣織工業組合 本金証紙
西陣織工業組合 本金証紙

証紙の読み方|生産者番号で“誰が作ったか”を辿る

証紙に記載された生産者番号は、組合の公開情報から検索できる仕組みがあります。 購入者は、番号を手がかりに組合員名(織屋)を調べることができます。

確認手順(購入者向けチェック)

  1. 現物(帯・反物・下げ札等)に証紙が付いているか確認する
  2. 証紙の生産者番号を控える
  3. 西陣織工業組合の検索ページで番号を照合する
  4. 織屋名・所在地などを確認し、必要があれば販売店・織元に仕様確認を行う

こちらのページから西陣織工業組合に所属する組合企業の検索が可能です。当社・岡本織物株式会社(西陣岡本)の組合員番号は187番です。

「西陣織」と「伝統的工芸品」は同じではない

「西陣織」という産地表示と、「伝統的工芸品(伝産法)」等の制度は、同じ意味ではありません。 産地表示は“どこ(誰の責任)”なのかを示す意味が強く、伝統的工芸品は“定義された基準(材料・工程・産地等)”を示す意味が強い、と考えると混乱しにくくなります。

本ページの主題は、あくまで「西陣織を名乗る根拠(証紙制度)」です。 経済産業大臣が指定する制度である「伝統的工芸品」の法律である「伝産法」や基準については、こちらの「伝統的工芸品産業振興協会」のページに解説があります。

西陣織の全体像については、 西陣織とは|歴史・技術・工程の全体像 をご覧ください。

織元としての補足|“名乗れる”と“買うべき”は別問題

「証紙がある=良いもの」「証紙がない=悪いもの」とは限りません。 ただし、購入者が西陣織製品を安心して選ぶためには、出自の説明が追えるトレーサビリティが重要です。

当社でも製品に証紙をつけますが、時と場合によっては付けないという選択もあり、100%添付しているわけではありませんが、お客様からご要望がある際は必ず添付しております。

購入時に確認したい3点

  • 証紙(生産者番号):誰が西陣織製品に責任を持つのか
  • 素材:箔/金糸/絹の仕様(例:本銀・本金・プラチナ等)について
  • 設計・工程:意匠・組織・分業工程の説明(価格の理由がここに出る)について

当社のものづくり(工程全体)については、下記ページでも詳しく解説しています。
西陣織の分業構造と製織工程

FAQ|西陣織の定義と証紙制度

Q. 証紙があれば「西陣織」と言い切れますか?

A:一般に、証紙は「西陣の製品であること」や「責任の所在」を示す重要な表示です。 ただし、制度の対象範囲や表示ルールは運用・品目によって異なる場合があるため、最終的には公式情報の確認と、販売店・織元への仕様確認が確実です。

Q. メガネ証紙がない商品は偽物ですか?

A:偽物だとは断定はできません。西陣織製品の品目や流通形態によって表示が異なる場合もあります(証紙が必ずしもメガネ型だとは限りません。布に貼り付ける四角いタイプの証紙もあります)。 ただし、購入者が「西陣織として選びたい」場合は、証紙や生産者情報の提示があるものを選ぶと安心です。

Q. 生産者番号で何が分かりますか?

A:証紙に記載された番号を照合することで、組合員名(織元)などを調べられます。 参考:西陣織工業組合|組合員検索

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