西陣織の音に育まれて|岡本織物 京丹後協力工場・布平



感謝状、中小企業応援士への委嘱、誠にありがとうございます。
中小企業基盤整備機構、略して中小機構。
独立行政法人中小企業基盤整備機構は、独立行政法人中小企業基盤整備機構法の定めるところにより、2004年7月に設立された独立行政法人である。略称は中小機構。 ウィキペディア
中小機構は、中小企業政策を支援してくれ、経営課題に応じた支援メニューで各中小企業を支援してくれる独立行政法人です。弊社も 2017年1月に支援を受けてフィンランド、ヘルシンキへ西陣織をどのように北欧デザインとマッチングできるのか、という企業調査へ行く事が出来ました。
本当に謎なのですが、その事について少々振り返ってみます。
2016年度の「海外ビジネス戦略推進支援事業」に採択していただきました。これにより、ヘルシンキにある繊維企業はほとんど訪れる事が出来ました。どこへ企業調査へ赴く事ができたのか、一部書き出します。









その他、沢山の方々にお世話になった一週間でした。
この2016年度当時、私はとてもばたばたしていてブログなどにこの北欧への渡航について書いていなかったかと思います。そのような気持ちの余裕は皆無でした。
この中小機構の支援メニューが決まったのは確か、6月から7月。そこからどこの国へ向けて弊社の西陣織 絹織物を持って行くのかの試行錯誤が始まりました。どこへ渡航をしたら一番有利なのかが第一関門でした。それが、非常に大変な作業でした。各国の情勢、文化等を調べ、比較などなれない作業。
最初は安易に「フランスかしら?」と考えました。しかし、株式会社パコロア代表取締役で、中小機構のシニアアドバイザーの小川陽子氏から「フランスにはまだ西陣織は上陸していませんか?」というお話がありました。西陣の基礎となるジャカード機はフランスリヨンからもたらされた機械です。フランスリヨンを含め、フランスには多数の西陣織が紹介され、すでに製品の販売もすでに軌道に乗っています。「まだ上陸していない国へ企業調査へ行くのが大事だと思います」と提案していただきました。
インターネット、ジェトロの図書館等で、各国に西陣織の片鱗が無いか調べる日々。さすが、西陣織です。沢山の国へ紹介され、絶賛されています。まだ西陣織が上陸していなくて、興味を持っていただけそう、かつ、私も面白いと思えることのできる国。アフリカ北部と北欧に興味を持ったので、その辺りの国を調べました。
朝8時に出社して、帰るのは朝の3時・・・。週休一日の弊社ですが、この間、休みは皆無でした。実際は、晩御飯を作りに自宅に帰って、作って食べてまた出社などで、きっちり8時3時で勤務をしていたわけではありませんが、この頃、仕事と家事の両立はきつかった・・・。この頃の記憶はあんまりありませんが、クラウドに仕事の記録が残っているので今読み返して愕然としています。過労死と言う言葉が頭をよぎったのは初めてです。
神社仏閣での西陣織の仕事をしている弊社にとっては新しい仕事ばかりで慣れない事の連続でしたが、とても鍛えていただいた日々でした。
一週間の渡航の為に準備をこれでもかというほどしました。これは、中小機構からのアドバイスがあったから、見えないところまで準備できたと思います。今までの絹織物のデザイン、織り方等の整理から始まり、新しいデザインの準備、西陣織の製織、自社のストーリーの掘り返し、翻訳、訪問先の選定、アポとり。苦労したのは平均年齢の高い弊社を総動員しての何度にもわたるブレインストーミング。皆、未経験ですし、神社仏閣用の布地を織っている弊社の販路開拓自体に疑問を持っているので、苦労をしました。
もう、これ以上書くのはまた辛さが蘇るので止めます。
そのような事を重ねて、フィンランドへ行く事が決まりました。
中小機構のアドバイザーをしてはる小川陽子氏(株式会社パコロア代表取締役)から「西陣織のサンプルをただ海外に持っていって披露するだけでは『Oh, beautiful!』で終わってしまいますよ。岡本さんが海外のお客様に本当に提供したいものは何ですか?自社の製品にどんな価値があって、誰に喜びや幸せをもたらし、いかにその国の生活になくてはならないものにできるのかを、訪問先で明快にアピールできるようにしてください。つまり、ビジネスにつなげる話をしなければ、現地調査に行く意味がないんです」と言われ、私は眼から鱗でした。認識甘かった・・・。
フィンランドへは私一人での渡航予定でしたが、急遽、弊社社長も同行できる事になり、そうなると今度は社長不在の間の仕事を一週間分段取りしないといけない。中小企業の社長は職人です。自ら動かないと仕事が出来ません。その穴埋めをどうにかせねば。少人数のマニュファクチャーなので、居なくなっても代わりは居ない。
そうこうしてなんとか2017年1月22日に関空を出発、1月28日に日本へ戻る、というヘルシンキへの旅が完了しました。
仕事の面では非常にエキサイティングな経験をしました。初めてのことばかりです。朝から晩まで異国の企業訪問。食事中は打ち合わせ。食事後も打ち合わせ、プレゼンの練習。名物のホテルのサウナにも入ることなく倒れこむ毎日でした。私達は基本、旅は大好きで毎回楽しみにしているのですが、この時のヘルシンキほど精神的に辛かった旅行はありません。美しいヘルシンキの町並みをあまり堪能できなかった事が残念でなりません。
下の画像は企業訪問で出していただいた可愛いおやつの数々。ほんま食べられなくてごめんなさい!
フィンランド、ヘルシンキは本当に美しい国でした。
弊社の絹織物は嬉しい事にどちらへ行ってもびっくりしていただき、絶賛されました。まさに小川陽子氏の仰るとおりでした。そして、ビジネスへと持っていくにはまだまだ難しいと言う事が解りました。生産ロット、納期、価格。市場に合った価格帯の中で、自分たちの伝統技術である西陣織 金襴 の絹織物をどのように発信していくべきなのか。これは今でも私達の大きな問題です。

フィンランドの人口は550万人。内需が少ない為、外需を求める国。バイリンガル率が高く、街は綺麗で食事も美味しい。水道水をごくごく飲める。人々もとても親切で温かい。とても良い国でした。
帰国してすぐに嬉しい知らせもありました。
ラグジュアリーブランドでのデザイナーとして活躍して、フィンランドで御自分のブランドを立ち上げた Mr. Teemu Muurimäki 氏より「ゴールデンのドレスを作りたい」という連絡でした。こちらも珍しい経糸の色でのご注文だった為、納品まで約半年お待ちいただきました。が、出来上がったドレスの素敵だった事!

このドレスはGolden Globe Awards ゴールデングローブ賞の授賞式でフィンランドの女優、Ms. Laura Birn ラウラ・ビルン様が着てレッドカーペットを歩いてくれはりました。

なお、中小機構さんがこのフィンランド渡航までの様子を記事にして下さっています。
こちらは冊子となっております。中小機構でいただけます。
今、振り返ってみますと、「こんな事をして意味があるんですか?」と言われた海外販路開拓、とても意味がありました。全てにおいて収穫だらけでした。大変な事も沢山ありましたが、弊社の仕事が一回りも二回りも広がったと思います。販路開拓をゼロから開始した弊社の基礎力を付けていただく良い機会になりました。何事も諦めずにやってみたら大変な事、辛い事を上回るエキサイティングへつながるという確信を持ちました。
非常にありがたい経験をさせていただき、中小機構さんには感謝をしております。
表題の「中小企業基盤整備機構より感謝状、中小企業応援士に委嘱をして頂きました。」におきましては、感謝をすることはあれども未だになぜ感謝状を頂いたのか未だに謎です。しかし、ありがたい事だと思い、大事にさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
フィンランドでは、通訳の方にも一週間朝から晩まで大変お世話になりました。Komachi Consulting Oy のラクソ美奈子様、感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。