西陣織の音に育まれて|岡本織物 京丹後協力工場・布平

このたび、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)より感謝状を頂戴し、あわせて「中小企業応援士」として委嘱を受けました。誠にありがとうございます。


「中小機構」は、中小企業の海外展開や販路開拓、経営課題の解決などを支援する独立行政法人です。制度や支援メニューの詳細は、公式サイトをご覧ください。
正直に言えば、いまでも「なぜ感謝状まで…?」という気持ちは残っています。
ですが、あの一連の取り組みは間違いなく、私たち西陣岡本(岡本織物株式会社)の視野と基礎体力を、ひと回りもふた回りも大きくしてくれました。
2016年度、「海外ビジネス戦略推進支援事業」に採択いただき、2017年1月にフィンランド・ヘルシンキへ。
西陣織が北欧デザインとどのように接続し得るのか、現地の企業・学校・デザイナーの現場で学ぶ機会を得ました。
この時に痛感したのは、「海外へサンプルを持っていくだけでは終わる」という現実です。
中小機構のシニアアドバイザーであり、株式会社パコロア代表取締役の小川陽子氏から、
「“Oh, beautiful!”で終わらせないために、誰に、何を、どんな価値として届けるのか。現地で“ビジネスにつながる話”をできるように準備してください」
この言葉が、私たちの背骨になりました。
そこから先は、調べる・比べる・決める・整える、の連続。
国の情勢や文化、既に西陣織が紹介されている市場、まだ届いていない市場。手探りで、しかし必死に組み立てました。
訪問先の一部を、記録として残します。(リンクは可能な限り公式サイトに統一しています)

Finlaysonではアーカイブを拝見し、COOであるMr. Risto Voutilainenとも会談。
西陣織とフィンレイソンのデザインが接続する可能性を調査しました。

Aalto Universityでは、Ms. Kirsi Niinimäki准教授と学生の皆さんと面談。
大学が「仕事」と密接につながり、外需を意識して行動している現場のリアリティを学びました。

Helsinki Design Weekでは、Executive ProducerのMr. Kari Korkmanと面談。
フィンランドで求められるイベントのあり方を伺いました。

Vallila Interiorは、工場跡を改築したオフィスとショールームが圧巻でした。
空間そのものがブランドの言葉になる、という感覚を現地で掴みました。

IvanaHelsinkiではMs. Pirjo Suhonenと面談。
堂々としたプレゼンに圧倒され、「伝える力」の重要性を叩き込まれました。
ピリヨさんとはその後もお付き合いが続き、来日時にはお会いしています。

Marimekkoではデザイナーのお二人と面談。
成功の背景にある「現場のリアル」を伺いました。
オフィスは、言うまでもなくマリメッコ一色。

Johanna Gullichsenは、手織りのドビー組織を起点に製品開発をするブランド。
私たちも長く抱える「ロット」の課題について、織りの現場を知る者同士として言葉が通じる時間でした。
TEXO ry(デザイナーのネットワーク)では、多くの方が集まってくださり、弊社の西陣織の布地をご覧いただいたり、皆さんの作品を拝見したりと、濃い交流の時間となりました。

Teemu Muurimäkiさんは、私がデザインした三階菱紋様でドレスを制作してくださいました。

その他にも、沢山の方々にお世話になった一週間でした。
この渡航の準備期間、私は本当に余裕がありませんでした。
ブログに書く気力も時間もない。毎日、調べて、まとめて、翻訳して、織って、打ち合わせて、また調べる。
「どこへ行けば一番有利か」から始まる、慣れない比較と判断は、想像以上に重たい作業でした。
そして中小機構のアドバイスがあったからこそ、「見えないところ」まで準備ができたと思います。
自社の織りの整理、デザインの準備、ストーリーの掘り起こし、翻訳、訪問先の選定、アポイント、プレゼン練習。
少人数の家内制手工業だからこそ、社長同行が決まった瞬間から、現場の段取りも同時に組み替える必要がありました。
2017年1月22日に関空を出発し、1月28日に帰国。
仕事としては非常にエキサイティングで、初めての連続。
ホテルのサウナに入る余裕もなく倒れ込む毎日で、ヘルシンキの美しい街並みを十分に味わえなかったことは、少しだけ心残りです。
下の画像は、企業訪問で出していただいた可愛いおやつの数々。
ほんま全部食べられなくてごめんなさい!






けれど、そこまでして行ったからこそ見えたものがあります。
ロット、納期、価格。市場に合う条件の中で、西陣織金襴の技術をどう生かすか。
この課題は今も続く大きなテーマです。
帰国してすぐに嬉しい知らせもありました。
フィンランドでご自身のブランドを立ち上げたTeemu Muurimäki氏から「ゴールデンのドレスを作りたい」という連絡です。
納品まで約半年お待ちいただきましたが、出来上がったドレスは本当に素敵でした。

このドレスは、Golden Globe Awards(ゴールデングローブ賞)の授賞式で、フィンランドの女優Laura Birnさんが着用し、レッドカーペットを歩いてくださいました。

中小機構さまが、このフィンランド渡航までの様子を記事にしてくださいました。
※ガイドブックは冊子版もあり、中小機構で入手できる場合があります(配布状況は時期により変わるため、詳細は中小機構へお問い合わせください)。
振り返ると、あの海外販路開拓は「意味があった」どころではなく、収穫だらけでした。大変なことも多かった。
けれど、それを上回るエキサイティングが確かにありました。
何より、販路開拓をゼロから始めた私たちに、基礎力を付けていただく機会になりました。
表題の「中小企業基盤整備機構より感謝状、中小企業応援士に委嘱をして頂きました。」については、いまでも“なぜそこまで評価を?”という気持ちは残っています。
ですが、ありがたいこととして、これからも大切に受け止め、前に進みたいと思います。
改めまして、中小機構の皆さま、関係者の皆さま、誠にありがとうございました。
そして、フィンランドでは通訳として一週間、朝から晩まで大変お世話になりました。
Komachi Consulting Oy のラクソ美奈子さま、心より感謝申し上げます。
西陣岡本の仕事や素材については、下記もあわせてご覧ください。