西陣織金襴引箔とは
歴史と伝統
西陣岡本では、「引箔」という伝統技法を創業以来大事に守ってきました。
私たちは和紙・漆・本金箔を使った平たくて短い糸「箔糸」を使う事で「本金引箔」または「本金柄箔」を多用した絹織物を多数製織しています。
「引箔」は中国から渡ってきた技術ですが、今は西陣、もしくは丹後の一部だけで織られている、奥が深くて味わいのある珍しい織物です。
当社では「本金引箔」は右記の2種類、ピカピカに光る「光箔」と落ち着いた光を放つ「さび箔」を主に使っています。
金の色も金の含有量で赤っぽくしたり等、色々な金の色の「箔糸」を作る事が出来ます。全てお客様のご要望によりご用意する特別な糸となります。
「箔糸」は織る布のサイズに合わせて作る糸で、帯なら帯幅より+20㎝程の幅の和紙に、私たちの金襴なら89㎝×60㎝の和紙をベースに作ります。
89㎝×60㎝の和紙の四隅は最後は切り捨てますが織るために必要な部分です。
本金引箔の場合、捨てる部分にも金箔が施されているので当社ではそれを回収して都市鉱山として金の再生に回します。
本金引箔の他に柄箔という模様を描いた「箔糸」も愛用しています。
この柄箔は模様を再現するために紙の最初から最後まで順番を間違わずに織らなければいけない難しい技術を必要とする織物になります。
通常当社では上品な淡い感じのデザインの「箔糸」を使っています。
時代の流れと共に引箔製品の需要が減った事で、素材の供給も減り、私たちが愛してきた「引箔」という織物もいつまで「箔糸」が手に入るか解らない状況になりました。
そこで、私たちは「箔糸」という素材・私たちの技術と伝統を守っていく為に、「引箔」という織技法をこれまで以上に表に押し出し、販売をしていきます。
新しい柄箔引箔へのチャレンジ
2023年晩秋、楽芸工房の伝統工芸士である西陣織引箔作家、村田紘平氏に特注で製作して頂いた「真珠粉本銀箔模様引箔」を使用した絹織物「全正絹西陣織金襴真珠粉本銀箔模様引箔」を発表しました。
「箔糸」を作る
和紙に銀箔や銀箔を加工して変色させた焼箔を使用します。今回は真珠の粉も採用しました。
真珠粉の採用
織り上がった織物に金彩加工で装飾として使用する事は一般的ですが、真珠を「箔糸」にして織り込む事が出来るのは西陣独自の技術です。
西陣織では昔から本金箔のような高級材料として、螺鈿や真珠やサンゴなど海の宝石を使用してきたという歴史的な背景があります。
- 真珠養殖業者の製品規格外となった真珠を粉にしたものを使用
- 金箔や銀箔等の金属の発色に真珠独特の柔らかさを与えます
- 近年のSDGsやサスティナブルの取り組みとしても有効です
今回は4種類制作。こちらは切る前の紙の状態の引箔です。
引箔を切断して「箔糸」にした状態です。この状態の引箔は四隅が繋がって、中だけ切断された状態になっています。
織るために四隅が繋がっている事が大事です。
全て切ってしまうと保存もしずらく、織る順番が解らなくなるため、織前で糸として切ります。
引箔の切断
この引箔を切断するための職人もいます。
今回は竹内切断所さんで切断してきました。
ギロチンというとても大きな機械で切断をします。
今回切断を初めて見学に行き、「本番の紙」の上下に幾層も幾層も紙を重ね、ずれないようにするその経験、これこそ経験が必要な技術だと感じました。
引箔装置を備えた力織機による製織
「箔糸」を引箔装置を備えたシャットル力織機で順引きと呼ばれる柄がずれないように順番に一本一本入れていく絣のような織り方をします。
箔糸の準備からとても緊張する織物です。
「全正絹西陣織金襴真珠粉本銀箔模様引箔」が織りあがるまで
下記は「全正絹西陣織金襴真珠粉本銀箔模様引箔」が織りあがるまでの動画です。
引箔は和紙を細く切った裏表がある平たくて短い糸で、これを裁断する工程も伝統工芸の技術の一つです。
私たちは手機・動力シャットル織機共に引箔を製織することが可能です。
先祖から受け継がれてきた技術や素材を大切にし、これからも西陣織金襴を守り続けていきます。
*西陣岡本では、伝統工芸各社に従来の仕事を増やし、そして、新たな仕事を作っていく事も使命の一つととらえています。職人を紹介いたしますので何かありましたらご連絡ください。