西陣織の音に育まれて|岡本織物 京丹後協力工場・布平
編み物とは、糸をループ(輪)状に絡ませながら連続構造をつくり、布地を形成する技法です。英語ではknittingと呼ばれ、織物(weaving)とは異なる基本構造になります。
経糸と緯糸を交差させて織る織物とは異なり、編み物は一本の糸をループにしながら連続的に引き込み、輪をつなげるようにして面をつくります。この「ループ構造」が編み物の基本です。
編み物の基本構造は特別な機械を必要とせず、指があれば編むことが可能です。そのため、その起源は古く、古代の漁網や防寒具の技法にさかのぼると考えられています。
〈織物・染物・編み物の違い〉の初めに書きましたが、私たちは展示会などに出展するとき、プロとして布地を扱う立場の方から「すごく立体的なプリントですね。」「どのように編んでいるのですか?」などと質問をされることがあります。その度に私たちは、布についてもっと知ってほしいと思って来ました。
その思いをこの一連の記事〈織物・染物・編み物の違い〉シリーズで書いています。
編み物は、下図のように一本の糸が連続した輪になり、それが縦横に連なって布になります。経糸と緯糸を交差する織物とは異なり、糸のつながりが可動的であるため、伸縮性や柔軟性が生まれます。
このため編み物は、身体に沿う衣服や、動きを伴う用途に適しています。

編み物は大きく「よこ編み」と「たて編み」に分類されます。
よこ編みとは、1本の糸を左右に往復させながら編む方法です。手編みのセーターやニット製品の多くがこの編み方です。伸縮性が高く、保温性に優れています。
よこ編みには「平編み・ゴム編み・ガーター編み」といった三原組織があり、これらを基礎として無数の応用編地が生まれます。
よこ編みの三原組織の一つ、平編みは天竺編み(てんじくあみ)やメリヤス編みとも言われます。最もポピュラーな編地です。一般的に流通しているTシャツの多くはこの平編みで編まれています。 表地と裏地の違いがはっきりしているのが特徴です。よこ方向への伸縮性を持っています。

ゴム編みはフライス編み、リブ編み、畦編みとも言われます。編むときに表編みと裏編みを交互に繰り返すため、平編みよりもより伸縮性の強い編地になります。表目・裏目ともに同じ編み目で生地の裏表がありません。

ガーター編みはパール編み、リンクス編み、両頭編みとも言われます。表目と裏目が1段(または数段)ごとに交互に編む編み方です。一般の方には手編みで言われる「ガーター編み」がなじみ深いと思います。

たて編みとは、一本の針に対して、複数の筬を用いて複数の糸を縦方向に同時に編み込む方法です。織物の安定性と、よこ編みの伸縮性の両方の特性を併せ持ち、「安定した編地」といわれています。伸縮性を持ちながらも、伸びすぎないという安定性を持ち、スポーツウェアや機能素材などにも用いられます。

織物は経糸と緯糸の交差によって構造が成立します。一方、編み物はループによる構造によって成立します。一枚の布の原理そのものが違います。
織物は経糸と緯糸が交差するという構造であるため、布地の安定性や緻密な紋様表現に優れます。編み物はループによって成り立つという構造のため、伸縮性や柔軟性に優れます。
編み物と織物は、設計する考え方が異なります。
編み物は糸をループさせて絡ませていくことで布にし、染物は布に色を与えることで表現します。成立させる技法が異なります。
編み物の起源は古代にさかのぼります。木の枝や植物の繊維を使って作られた手作りの漁網が発掘されています。アラビア半島で遊牧民が羊や山羊の毛を編んで生活用品を作ったのが始まりとされています。最古の「編み物」の遺物は、3〜5世紀頃の古代エジプト(コプト時代)のウール製靴下とされています。

筆者が子供のころに読んだニットの本で「アイルランドや北欧の漁師の妻が編むフィッシャーマンズセーター(アランセーター)」は漁業の激しい動きにも身にフィットして温かく、着ているうちに内側がフェルト化して風を通しずらくなるという話がとても印象的だったのを覚えています。
世界中で気候やその土地土地の産物に合わせて、いろいろな編み物があるのだなと実感しました。
衣服(セーター、カットソー)、フリース製品、スポーツウェア、医療用素材、産業用の素材など、多様な用途があります。編む技法は伸縮性と軽量性をもった布地を作ることができ、ファッションから産業資材まで幅広い分野で編み物は活用されています。
西陣織は経糸と緯糸の交差による織物です。編み物はループ構造による布地の形成技法です。
西陣織のような織物と編み物では基本構造が根本的に違います。
A. 糸をループ状に絡ませて布をつくる技法です。
A. 織物は糸を交差させて構造を固定します。編み物は糸をループ状につなげる構造です。
A. ループ構造が可動するため、伸縮性が生まれます。
A. 古代から、漁具や衣類、身の回りの製品として発展してきました。近代以降、機械編みによって大量生産が可能になりました。単純なものの場合特別に大きな道具を必要とせず、伸縮性があり「物に沿う」ことが得意な編地は世界中で愛されてきました。
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以下のページから「織物・染物・編み物の違い」、「織物とは」、「染物とは」についてご覧いただけます。「同じように見える布だけれど、織物・染物・編み物は違う」ということを皆様に知っていただけると、西陣織金襴の織元としてとても嬉しく思います。