本金で織る金襴は消えてしまうのか
西陣織金襴の美しさを支える素材のひとつが「本金糸」です。しかし現在、その本金糸に使われる「金」の価格が世界的に急激に上昇しています。
私たち岡本織物では、本金糸を使った西陣織金襴を現在も織り続けています。
本金糸を使用した西陣織金襴には、西陣織工業組合が発行する「本金証紙」が付けられます。

しかし今、この本金を使った金襴が大きな危機に直面しています。
理由はシンプルです。
金の価格が急激に上昇しているからです。
金の価格高騰については当社ブログ、日本経済新聞社の記事でも取り上げていただいています。

金価格はどれくらい上がっているのか
以下は1978年から現在までの金価格の推移です。
- 1978年 1500円台
- 2020年 6000円台
- 2023年 9000円台
- 2025年 17000円以上
ここ数年の上昇は、伝統工芸の現場にとって無視できないレベルになっています。
「金の値上がり、ほんましんどいわ。」
本金を使う他業種の友人も、みな同じことを言います。
金は安全資産として世界的に需要が高まっており、インフレや地政学リスクの影響もあって価格が上昇し続けています。
西陣織の本金糸・本金引箔はどう作られるのか|金箔の糸
西陣織金襴で使用される本金引箔糸は、単に金色の糸ではありません。
和紙に漆を塗り、その上に金箔を貼り、細く裁断して糸として使います。

この金箔の多くは石川県で作られています。
金を何千回も叩いて極限まで薄く伸ばし、箔にしていきます。
本金の糸の作り方についてこちらの動画がわかりやすいのでご覧ください。©@京都金銀糸工業協同組合
私たちが通常使用している金箔は四号色金箔で、純度は94.438%です。
西陣織で使われる金糸の種類
本金糸
和紙+漆+金箔で作られる、伝統的な金糸です。
西陣織金襴の最高級素材になります。
蒸着金糸
ポリエステルフィルムに金を蒸着させた糸です。
実際の金の使用量は少ないですが、蒸着工程には多くの金が必要になります。
代用金糸
アルミや銀を蒸着して金色に見せた糸です。
多くの量産織物ではこの素材が使われています。
西陣織で使われる金糸の種類については、こちらの記事で詳しく解説しています。
それでも本金糸で織る理由
では、なぜ高価な本金糸を使い続けるのでしょうか。
理由は単純です。
本物の金の輝きは、やはり違うからです。
金は錆びず、変色せず、何百年も輝きを保ちます。
光の反射が布に奥行きを生み、織物の立体感を強くします。
神社仏閣の空間で金襴が美しく見えるのも、この光の反射によるものです。
金価格の高騰と、これからの西陣織
金価格の上昇は、西陣織の現場にとって大きな課題です。
- 材料費の高騰
- 価格転嫁の難しさ
- 金糸の調達問題
それでも私たちは、金襴を織り続けています。
西陣織金襴は、単なる布ではありません。
素材、技術、職人の仕事、そして長い時間の中で育ってきた美意識が織り込まれています。
もしどこかで西陣織金襴を見る機会がありましたら、ぜひ金の光を少しだけ意識して眺めてみてください。
西陣織の金襴については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
*アイキャッチ画像は本金の織物ではありません。

