初夏ですね。
京都はかなり暑くなってきています。
今日の本題。京都紫野の「玉の輿神社」ってご存知ですか?
応仁の乱の時に西軍の総大将、山名宗全が船岡山に西軍の陣を張ったという、「西陣」の発祥の地、船岡山北側に位置するのが今宮神社です。別名を「玉の輿神社」。
今宮という名称は、一条天皇の夢によって船岡山にあった疫神は現在の紫野の地に奉遷され、それまでこの地にあった疫神社に対して新しい宮という意味と、新たに設けられた神殿三宇ともども今宮社と名づけらました。
今宮神社には、大国主命(おおくにぬしのみこと)、事代主命(ことしろぬし)、櫛稲田姫命(くしなだひめ)の三柱が祀られています。
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この画像は今宮さんにある末社の織姫神社。祭神は栲幡千千姫命
画像をご覧ください。門と思いきや、シャトル(杼)が門になっています。さすが、西陣一帯の氏神さん。
12日はどんどん!どんどん!という太鼓の音が聞こえてきました。
今日は「今宮祭還幸祭」!外にいこう!
巡行は、車太鼓、鉾(小さな子供鉾もありました)、八乙女(暑い中かわいらしい白塗りの女の子たちががんばって一生懸命あるいてはりました)、獅子舞、牛車、神輿が通りました。
最初は船岡山に創建され疫病を鎮めると信仰を集めていました。当時、平安京が京の都として栄えていましたが、疫病や災厄も続いて、当時の貴族たちが悩みます。科学や医学の無い時代ですから神仏に頼るしかありません。
当時の一条天皇が疫病を鎮めるために御祭神を現在の紫野の地に勧進して御霊会(ごりょうえ)を催しました。疫病や災厄を鎮めるために京都では「神泉苑、御霊社、祗園社」などで御霊会(ごりょうえ)が営まれました。
紫野での御霊会は1001年の事です。
今から1012年前のお話。昔の流行病は大変だったんでしょう。今でも「隣国で新型インフルエンザ!」とか大問題になったりします。
これが紫野御霊会であり今宮祭の起源だそうです。
しかし、応仁の乱などで神社の荒廃とともに「今宮祭」も衰退しましたが「八百屋のお玉さん、桂昌院」よって再び復興。
こうして「今宮祭」は、西陣とともに町衆による「西陣の祭」として盛んに営まれています。毎年五月に「西陣の祭」として続いています。
わが社の団塊の世代の方たちによると「今宮さんのお祭りの時には「お旅所(おたびしょ:「おたび」とも呼ばれる(お神輿休憩所?)」はえらいにぎわいようで、大宮通には映画館も何件もあるし、夜店も沢山出るしそれはそれは賑やかだったえ」とお祭り好きにはうらやましい昔話を耳にしました。
御祭りでは5月1日に神輿が出て、五日に神幸祭(おいでまつり、ともよばれる)(この5日から15日まで「お旅所(今宮さんのお旅所は大宮通に在ります)」と呼ばれる場所に神様が休憩してはるのです)、15日(今はこれに近い日曜日)の還幸祭(おかえりまつりともよばれる)。19日に神輿を納めてお開き。
御旅所の近くには行った事ありませんが御旅飯店という中華料理屋さんがあるので大宮通を通ったら御旅はわかるはず。普段は駐車場になっています。
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で、宴会中に外に出てみますと、このような行列が。
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上の写真は祇園祭で有名な「鉾」の原型といわれています。西陣ですもの。周りの懸想品も堂々たる西陣織です。鉾も美しいですね。
見物している間も西陣織関係者さん達が羽織袴を着ていたり、御神輿担いでいたりと賑やかなものでした。
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さすが初夏のお祭り。目にも涼やかな紺の裃に浴衣。葵のご紋。浴衣も葵です。
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この鉾で悪霊や災害、疫病を退治。
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これらはお子達鉾。かわいいんです。小学生達が一生懸命お腹につけた「鉾固定器具」に鉾を乗せて「チャリン、チャリン」という鈴の音を響かせながら上の鉾がピランピランと動きます。
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この日はとても暑かったので一休憩。
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子供神輿。この道は、ずらずらと行列が通り過ぎるだけだったので、威勢の良い「わっしょいわっしょい」は見られなかったんです・・・。
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天狗さんがにらみをきかせています。
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社紋は三階松。
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獅子舞も2匹いました。咬まれる子供。色んな所で「ギャ~ッ!」という泣き声が聞こえてきます。可愛すぎる~。
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牛車も通ります。
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この車輪が御所車。「ギーーーギーーーッ」ときしむ音。人の乗れる牛車だったら通常は4人乗りだったそうなので大きいし、そのきしみ音たるやすごかったんでしょうね。
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この西陣織は竜に雲、宝珠が飛び、「三階松と十六菊」の定紋を囲む紋様です。
ところで、今日のブログのお題である、「玉の輿神社」。今宮神社はなぜ玉の輿神社と呼ばれるのでしょう。
それは・・・京都西陣の八百屋に生まれた「お玉」が徳川3代将軍家光に見初められて側室となりました。そうして無事に男児をもうけ、5代将軍綱吉の生母・桂昌院として従一位となり出世したのです。その事から「玉の輿」という言葉が出来たとも言われています。お玉=桂昌院は京都のお寺や神社を守ることに力を注ぎます。そうして実家の氏神、今宮神社の復興にも力を入れ社殿を修復して鉾を寄進したと言われているそうです。
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上方の画像の「葵の御紋」がここでつながります。桂昌院さんつながりの葵の紋なんです。
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若い子達が賑やかに来はります。
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この紋様も「唐花」。西陣織です。
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下の画像が西陣の地を愛した「お玉さん」をイメージし装飾した「玉の輿」。たぶん学生さんたちの「YOSAKOI」を普段は踊ってはりそうな方たちが担いではりました。
音頭は「二条のお城で三代将軍家光様に見初められ~」という掛け声で。
マネキンさんがお玉さんの扮装ですね。
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唐花に唐草紋様の西陣織。
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これは名前を勝手につけるとしたら「霞に七宝唐花唐草」西陣織。
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太鼓部隊。
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御神輿がピッカピカです。
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中の西陣織は竜に三階松。周りの鶴&三階松の意匠。
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そっくりなようで意匠が神輿によって違います。
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松は縁起の良いものとして有名ですね。常緑樹でいつでも青々しているから。
そうして「祀る」という言葉には「まつ」という言葉が入っています。神様の存在を「まつ」という意味があると聞いたことがあります。そういえば、松の姿も手を上に向けて広げて何かが降りてくるのを待ち受けるような印象もあります。能舞台にも必ず松の意匠があります。能の神を待っているのかな?
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この「鈴」の御座布団。可愛いです。ただぶら下げても音はなるのに、律儀に鈴に座布団を与えるあたりが日本人だなあ。
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ゴロゴロ・・・と車輪が進みます。
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細かい装飾が綺麗です。
自家用の輿として使えるのかしら・・・。小さめのだったら超高級車くらいの値段で買えるはずなんですが、何せ人力なので燃費が悪い・・・。
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殿は神主様。オープンカーで登場です。
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こんな車が相伴しているあたりが西陣らしいでしょ。
このお守りは私のお守り。
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今宮さんの名物は・・・あぶり餅。竹串に小さく付いた御餅がこんがりと炭で焼かれて一皿15串です。白味噌の餡がなんとも言えず美味しいので御来京の際は紫野まで足を伸ばして、西陣一帯の氏神さんのお参りをどうぞ。
今宮神社の門前に2軒のあぶり餅屋さんがあります。かざり屋さんと一和(一文字屋和助)さんです。
かざり屋さんは、創業から約400年だそうです。一和さんは約1,000年、平安中期の創業だと言われています。
どちらでも値段は一緒。どちらも座敷で食べられます。
今宮神社にお参りして、あぶり餅で一休憩。ぶらぶらと大徳寺を抜けて北大路を通り抜け、船岡山に登って京都を見渡した後、西陣織のがしゃんがしゃんという織る音を聞きながら西陣中の路地を通り抜けるという観光も面白いです。
西陣中には面白いお店も出来ているので休憩するところも沢山あります。
船岡山を降りた後に船岡温泉で汗を流すと言うのもお勧めです。
西陣の中に観光にいらしても中々西陣織を目にすることは出来ないと思いますが、西陣織を機械で織っている音はします。どうぞどうぞ、西陣においでやす。