「西陣織の魅力とは何か」—この問いを私たちは毎日毎日考え続けています。
織りあがった絹織物の艶はもちろん魅力的です。しかし、西陣織の魅力は織り上げられた布の美しさだけではありません。織機が奏でる音、職人の指先が織り上げるリズム、その一つひとつに長年培われた技と伝統が息づいています。
西陣織を愛する私たちは最近、その「織る音」に焦点を当て、YouTubeでのご紹介を始めました。
西陣織と「音」の関係
京都・西陣では、代々受け継がれてきた技法で織物が織られています。
織る前の工程も様々な職人が関わっています。そして、「織る」ため必要不可欠な「織機」の動きにも織物を織る職人たちの経験と技術が詰まっています。私たち「西陣岡本 岡本織物株式会社」は織屋であり、上京区の工場では手機をメインに、丹後で力織機の絹織物を織っています。上京区の工房での「手織りの織機が奏でる音」は、ただの作業音ではなく、文化と歴史が刻まれた「響き」だと私たちは思っています。
YouTubeで届ける織る音の世界
伝統工芸の魅力を伝える方法は多様ですが、「音」に焦点を当てることで、西陣織の持つ世界を体感していただきたいと思います。弊社の職人たちの多くが西陣織を織る家で生まれて育ちました。西陣で生まれ育った職人たちにとって、織機の音は幼い頃からそばにあった子守歌のようなもの。その音と共に成長し、やがて自らその音を奏でる立場になったのです。
織屋の息吹のような「機(はた)の音」、この音をYouTubeという全世界に届けることができるメディアで「職人が織る際の音」を届けています。
例えば、ジャカードの為のモーター音、緯糸や引箔を通すときの「シャッ、シャッ」という軽快な音、綜絖(そうこう)が動く音、打ち込みの音。そんな音たちを映像とともに届けることで、まるで工房にいるような感覚を味わって頂けるかもしれません。
これにより、西陣織の「静的な美」だけではなく「動的な魅力」を感じて頂けたら嬉しいです。
お客様の反応と可能性
「織る音」の動画を公開してまだ間もありませんが、問い合わせが増え、国内外から「まるで瞑想のような音」や「実際に織る現場を見てみたくなった」といったご連絡をいただいています。
音を通して西陣織の世界に興味を持ってもらえることは、職人たちにとっても励みになります。
伝統技術の継承にも繋げていけるように頑張ります。
西陣織は、絹地の美しさだけではなく、織る音や職人の技によって命を吹き込まれています。そして、それを伝える手段としてYouTubeには期待をしています。10年前にはこのような事ができるなんて思いもしませんでした。
今後も、音を通じて西陣織の魅力を伝えていきたいと思います。
ぜひ、織る音を感じる旅へと、YouTubeの動画を覗いてみてください。
追伸
このブログ記事の著者が動画を撮り、編集して投稿をしています。
職人たちは変化を好まない生き方を大切にしています。安定した毎日こそが、最高の織物を生み出すためのリズムなのです。が、動画を撮る、という午前中の約30分は「また撮るのか」と微妙に嫌がれています。
しかし「この心落ち着く織の音」を世界に届けたいのだと職人たちに伝え、なんとか撮影をしています。
そのような背景がある、西陣岡本チャンネル。
チャンネル登録の上、織の音の動画をご覧いただけたら社員一同心から嬉しいです。