日本の伝統技法:西陣織 金襴 真珠粉本銀箔模様引箔
西陣織は日本の伝統工芸品で、西陣と呼ばれる一帯は平安時代より連綿と続いてきた歴史ある織物産地です。
「源氏物語」第七帖 紅葉賀
西陣織 金襴 真珠粉本銀箔模様引箔とは?
西陣織金襴は、平安時代から進化してきた高度な技術の織物です。西陣織の本流とも言える西陣織金襴は、神社仏閣の荘厳や、富裕層の衣服や装飾品として愛され、織られ続けてきました。
その魅力の一つが、和紙を使った金糸や銀糸で織られた豪華さにあります。特に、朱色の「カラミ糸」で金糸や引箔糸を押さえる織技法は、実用性を持たせつつ、金の輝きを最大限に引き立てるための工夫です。
当社は引箔に、よりダイナミックな表現を求めるためにラッカーで彩色、本銀箔や真珠粉を使った新しい引箔を導入するなど新しい模様引箔を模索しています。
以下の動画で、引箔関連の制作過程をご覧いただけます。
朱カラミ糸とは?
西陣織金襴は金襴という名前が示すように、金色を特徴としており、その金色を美しく表現するために「朱カラミ」という仕組みが考案されました。これは、非常に細い朱色の糸を使って金の箔糸や金糸等を押さえる技法です。
金の色に被さっても金の色を邪魔しない「朱色」のカラミ糸はとても細い糸です。
当社の場合、通常の経糸の細さは「21の2双 (21デニール2本合わせ)」、「21の3双 (21デニール3本合わせ)」ですが、カラミ糸は「21の単糸 (21デニール1本)の生糸(未精錬)」と通常の経糸の半分か三分の一の細さの糸です。この技法により、金色の輝きを損なうことの無い織物が完成します。
以下の写真はその朱カラミ糸です。
拡大して見ると糸の存在に気が付きますが、遠目で見ると解りません
- 左:一見した写真
- 真ん中:拡大写真
- 右:更に拡大(金の箔糸を細かくとじている朱色の糸、これが朱カラミです。)
朱カラミ糸の織機に掛かる位置
朱カラミ糸は、布地のメインカラーとなる経糸の上に配置されます。。これが朱カラミ糸で、上経と呼ばれ、経糸とは別に織機に掛かります。
短歌を西陣織 金襴の絹織物で表現
織物の構造について熱く語ってしまいましたが、ここで本題に戻りましょう。
真珠粉本銀箔模様引箔を使い、源氏物語の第七帖、紅葉賀での一場面、源氏の君から藤壺の宮へのラブレターである短歌、「物思ふに 立ち舞ふべくも あらぬ身の 袖うち振りし 心知りきや」を引箔で表現しました。
短歌を草書で表現、青海波を舞った時の歌なので、青海波文様と京都東山をイメージする霞で表現しました。以下は紋意匠図を掲載しています。右が上の句、左が下の句です。
織りあがった絹地がこちらです。右が上の句、左が下の句です。
西陣織 金襴模様引箔の手仕事による魅力
模様引箔の魅力は、その圧倒的な迫力と箔を使う事で生まれる金属的な美しさだと思います。
実際にご覧いただかないと伝わらないその魅力は、正倉院にも金糸の布が所蔵されているように古くからある技術でありながら、未だに書物には詳しく紹介されていない神秘的な技術です。
和紙、漆、金箔から作られた引箔、もしくは模様を描きいれた引箔の技術は西陣金襴の根幹と言っても過言ではありません。引箔は和紙を作る人、漆を塗る人、金箔を貼る人もしくは模様装飾をする人、和紙を糸状に裁断する人の4工程が必要です。一人でも欠けては作る事の出来ない短くて平たい糸です。
以下の動画では、引箔の作り方を詳しく紹介しています。
本金引箔
和紙に漆を塗り、金箔を貼って裁断した本金引箔。弊社は能登の23金箔を使用しています。
模様引箔
和紙にラッカーなどの塗料で模様を描き、本銀箔や真珠の粉で装飾した模様引箔です。自由に描くことができるこの技法は、お客様の好みに応じて多様に変化させることができます。
模様を再現するために、模様の順番を守り、「順引き」の技術が必要とされ、西陣の金襴幅(耳を入れて約70㎝)で一般に向けて販売しているのは当社一社のみです。
平安文学の一瞬をジャカードで現わし、引箔を織り込み、屏風と掛け軸を仕立てました。
西陣織 金襴真珠粉本銀箔模様引箔で作る屏風と掛け軸
西陣織 金襴真珠粉本銀箔模様引箔屏風
- 製織:西陣岡本 岡本織物株式会社
- 屏風仕立て:北村松月堂
西陣織 金襴真珠粉本銀箔模様引箔掛け軸
- 製織:西陣岡本 岡本織物株式会社
- 掛け軸仕立て:京表具小野澤
これらの絹織物製品を実際に手に取って、その魅力を感じていただけたら嬉しいです。
販売は弊社オンラインストアにて