おはようございます。
京都西陣金襴屋の岡本織物のブログを読んでくださる方々どうもありがとうございます。
今日はうちの西陣織で使う絹糸のお話をさせていただきます。
これは染め上がった絹糸です。
原糸を染め屋さんに頼んで、このように染まって戻ってきます。西陣織は完全分業の世界で、うちは「織る人」染屋さんは「精錬して染める人」です。
まだ「かせ」の状態ですね。
西陣では「すが」といいます。
絹糸は繭から出したばかりのときは張りがあり硬いのです。写真で解るでしょうか。精錬が終わった糸はしっとりしますがこの染める前の生糸は張りがあります。韓国のポジャギやチマ・チョゴリに使われる張りのある薄絹は未精錬の糸を使用していたような・・・。
繭を作るお蚕さんは「フィブロイン」という蛋白質を、セリシンという蛋白質でくっつけながら吐糸することによって形作られています。
それで、こんなににきゅっと締まった繭になるんですね。
お蚕さんは蛾の幼虫。うちの夏みかんの木に付くアゲハの青虫とはやはり一味違います。
この繭のイメージから生まれた京都のイメージキャラクターまゆまろちゃん。
まゆまろちゃんは「京都府」のイメージキャラクターなので京都府庁近辺で良く見かけます。
すみません。話が飛んでいました。その「フィブロイン」という蛋白質を「精錬」という工程で取り除きます。
精錬をしないと糸に張りと少々のざらざら感があり、所謂「絹の輝き」からは遠いのです。
そして、染料を入れるためにも精錬しないと染色できません。
これはウール(羊毛)でも一緒です。
ウールも(ウールは汚れもすごいのでその汚れ落としの意味もありますが・・・)ソーピング等といって石鹸のお湯で煮ながら洗ったなあ、と思い出し。フェルトにならないように気をつけて・・・。
精錬が終わったら染めます。
染屋さんにうちで買った糸を取に来てもらって持ち帰ってもらって染めて頂きます。(もちろん精錬も)
染屋さんは夏の暑いときも、染鍋とともに汗をかきかき染めてくれはります。大変やろなあ。
染屋さんから染めて戻ってきた赤い絹糸。
つやつやした絹糸に染め上がります。
そのように染め上がり、出番を待つ糸たち(これは緯糸になります)。
西陣織は諸々の職人さんの手がないと出来上がりません。
うちみたいな織屋だけでは西陣織は織れないのです。西陣の分業制は、各々の技を磨く為に必要だったんでしょうね。高齢化が進んでいますが、どうなっていくんやろなあ。
ところでお蚕さんは「桑の葉」を食べます。
桑の葉は裏がざらざらしてて葉のふちが少々ぎざぎざしています。
桑の実を食べたことがある人は多いのでは・・・?
私は家が山の近くにあったので、ちょっと山に入れば夏には桑の実を食べたりしました。
時期的にはもうすぎてしまいましたね。
われらが西陣からすぐそばの京都御所にも桑の木は植わってるんです。
有名な秋になると黄金色に染まる大銀杏があるのですが、その少々南に大きな桑の木があります。ちょっと種類は違うと思うんですけど、実は桑の実です。
夏の始めには桑の実がちゃんと生っているのです。
発見したときには嬉しかった~。
思わず食べてしまいました。
野蚕というか、ほとんど繭にはならない虫も多いようで、あっという間にふやふやした繊維で一杯になってしまうんですけどね。
これで、我が西陣織屋の経糸にする絹糸のお話はおしまいです。
先日撮った京都名物鴨川にずらりと等間隔に並ぶ恋人達の写真。
すごいですね。こんな感じでどんどん間隔が狭まりながらも密集していきます。
人のテリトリーに関する意識の変遷が垣間見られて面白い。
なんて思いながら川を見ていたら、あ!鯉が滝というか川の落差を登ろうと必死になってる!!
がんばって滝に近づきます。あとちょっとや!がんばって生の滝登りを見せておくれ!この滝の上の方にはゆったりと泳ぐ鯉が二匹。あの二匹はこの過酷な滝を登ってのゆったり悠々とした泳ぎを楽しんではるんやろか・・・。この赤い四角は泡でよく見えませんが、実は赤い四角のちょっと下流にももう一匹がんばって登ろうとしている鯉がいます。
たぶん、ちょっと疲れるんでしょうね。ふう、と息をついた瞬間に横腹に水を受けてしまうのかあっというまに下流に落ちます。それをじっと見つめる鷺。京都にいらしたら鴨川をしばらく見つめるのも一日の疲れを癒すのに楽しいです。どうぞどうぞ、京都観光をお楽しみくださいませ。
この鯉は私が見ている間は登れませんでした・・・。残念やなあ。