誉田屋源兵衛・黒蔵で行われている「Midway:還流からのメッセージ クリス・ジョーダン+ヨーガン・レール」に寄せて頂きました。「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の一つです。
ヨーガン・レールさんと言えば先日亡くなってしまった天然素材を活かした服のデザイナーで有名。ゆったりとしていて奇抜さ等は無いけれど長い事着ていられる、自然体でいられるような良い服を作ってはります。実際私も30年くらい前のコートを今も着ていたり。2014年、一昨年に事故で亡くなってしまったんです。
ヨーガン・レール社の社員食堂はベジタリアンメニューで有名です。そのような所にもヨーガン・レールさんのモノづくりへのこだわりが感じられます。
そんな、ヨーガン・レールさんですが八重山諸島に移住して月の3分の1を海辺の家で暮らしていたそう。浜辺に散歩に行くと大量のプラスティックゴミに汚染されている浜辺を見て、心痛めていたそうです。毎日掃除をしても掃除をしても集まってくるゴミたち。それらを洗って、色毎に分類して作品を作り始めたそうです。モノづくりをする人というのは作ってないと落ち着かないんでしょうね。よく解ります。
漂流廃棄物なのに美しい事。ランプ、美しい。この製作はなくなる寸前まで続けられて発表されたのは亡くなった後だそうです。
まず、会場にあった展示会の説明書きから。
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Midway: 環流からのメッセージ クリス・ジョーダン+ヨーガン・レール
最も近い大陸からも約3200キロの距離にあり、太平洋の真ん中に浮かぶミッドウェイ 諸島では、お腹から色とりどりのプラスチックゴミやペットボトルキャップが露出した状態のアホウドリの雛の死骸が、何千も漂着するという惨事が続いている。この無惨な雛の骸がおさめられたクリス・ジョーダンの写真は、ゴミが海鳥を死に至らしめるという現実だけでなく、現代文明のありさまを映すもう一つの肖像を提示していると言えよう。 本展示作《ミッドウェイ》は、ジョーダンの最新作にあたり、制作中のドキュメンタリー映画《ミッドウェイ》のパイロット・ヴァージョンも会期中に上映される。
また同会場では、デザイナーのヨーガン・レール(1944-2014)が生前に制作した、 プラスチックゴミ製ランプの展示を併設する。彼が晩年を過ごした石垣島の砂浜で、 貝殻や珊瑚にもまして目についたという大量の漂着ゴミ。そのほとんどを占めるというプラスチック製品の残がいを拾い集めて、レールはランプの材料とした。醜いゴミから美しいもの、実用的なものを作ることを、「作ることを仕事にしている私の小さな抵抗」とした彼の思いが込められている。
クリス・ジョーダン
美術家・写真家。1963年アメリカ、サンフランシスコ生まれ。写真イメージを活用したコンセプチュアルな作品で、現代のマス・カルチャーや消費社会に関わる問題を考察してきたジョーダンは、文明社会が排出する残がい物を撮影した《Intolerable Beauty: Portraits of American Mass Consumption (耐えられない美・アメリカ大量消費社会の肖像) (2003-2005年)や、現代アメリカ社会にまつわる衝撃データを視覚化した《Running the Numbers: An American Self-Portrait (数字は語る:アメリカの自画像) ) (2006年~–)で世界的に評価された主な受賞暦に「Ansel Adams Award for Excellence in Conservation Photography (アメリカ 2010年)等がある。
ヨーガン・レール
デザイナー。1944年ポーランド生まれ、ドイツ人。パリやニューヨークでテキスタイル・デザイナーとして活躍し、1971年に来日。1972年にブランド「ヨーガンレール」を設立。2006年には職人の手仕事を尊重し、天然素材を使用した服やべッドリネン、 器、家具などを扱うブランド「ババグーリ」を立ち上げる。90年代後半沖縄県石垣島に農園と住居をつくり、東京と石垣島を行き来しながら活動する。没後、展覧会「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」(東京都現代美術館、2015年)にてランプ作品などが展示され、話題となった。
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会場にヨーガン・レールさんの言葉が書いてありました。
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沖縄にある海辺の家で1か月の3分の1を過ごすようになって、15年になります。
畑を耕し、創作のアイデアを練る合間に、犬の散歩と気分転換を兼ねて家の前の浜辺に降りるのが私の日課ですが、その度に悲しみと怒りが綯い交ぜになったような複雑な気持ちになるのです。なぜなら、砂浜を歩きながら、美しい貝殻や珊瑚のかけらを拾うのを楽しみにしていますが、貝殻や珊瑚にもまして目に付くのが流れつく大量のゴミだからです。
時にはガラス製の古いブイが流れ着いたりして、面白く思うこともありますが、流れ着くゴミのほとんどは醜いプラスチック製品のなれの果て・・・。発泡スチロールの切れ端、ペットボトルのふた、洗剤の容器や子供のおもちゃなど、日本のものもあればどこかアジアの国から流れ着く物もあります。見つけるたびに拾い集めるのですが、次の日にはまた流れ着いています。
とうとう私はそれらのゴミを集めて、色事に分類して何かを作り出そうと思いました。ゴミだけで何かを作り出せるほどに沢山流れ着くのでそのことを多くの人に知って欲しかったからです。
先日旅をして与那国の浜辺に降り立つ機会がありました。砂に足を踏み入れて歩くうちになんともいえない違和感を覚えました。思わず砂に手を差し込んでつかみ、目を凝らしてみて衝撃を受けました。砂の中に砂と同じ位の細かく砕かれたプラスチック片がびっしりと混ざっているのがわかったからです。
遠目には美しく見える砂浜なのに、こんな事になってしまっている。誰でもない、人間がしたことです。これは文明の終わり・・・私にはそう思えてなりませんでした。
私は日本人ではありませんが、この国に来て40年以上も住んでいます。美しかった日本を覚えています。もしも許されるならずっとこの国で暮らしたい。
だから知って欲しいのです。こんなに汚れてしまった事を。そしてゴミを取り除く事の必要性を、ゴミを出さない暮らしの重要性を。これは日本だけの問題ではなく世界中に伝えたい事です。
ゴミには目に見えるものあれば、目に見えないものもあることを皆さんはご存知でしょう。そのどちらも増えすぎれば文明の終わりを招きよせます。おそらく地球自身は自浄の努力をしている事でしょう。けれど、浄化のための大きな力になるのは、一人ひとりの小さな人間の力の集結でしかないのです。
もし、多くの人がその事に気づくために何かができるなら、今しなければならないと思う気持ちを止めることは出来ません。
醜いプラスチックのゴミを大量に見せただけでは、その恐ろしさを分かってもらえないのなら、私はそのゴミを使って何か自分が美しいと思うものを作り出す努力をします。ただ美しいだけのオブジェではなく、もう一度人の役に立つ実用的なものに変えましょう。これは物を作ることを仕事にしている私の小さな抵抗です。それによって、この大量のゴミに目を向けてもらえるように。私がこれ尾を自分の最後の仕事だと思っています・
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クリス・ジョーダン(Chris Jordan)さんの写真も美しく、かつ衝撃的でした。展示されていたのはミッドウェイ諸島で撮影したアホウドリの写真。太平洋の真ん中に浮かび最も近い大陸から約3200キロの距離にありというミッドウェイ諸島でさえ、年間20トンものゴミが流れ着くそうです。アホウドリの雛達は親がえさと間違えて与えてしまったプラスティックゴミがお腹の中にみっちり詰まった状態で死んでいます。子供と一緒に見てたのですが「まず、アホウドリは咀嚼を覚えないとあかんやろ・・・」という話になりました。あまりにも質感が違いすぎるのにまだビニール袋はご印の可能性があるか知れませんがペットボトルのふた、櫛なども出てきているのです。しかし、長年、魚を丸呑みしてきた生活なので中々今から変化するのは難しいでしょう。やはり我々人間の責任だと強く思いました。
クリスさんの写真の写真は撮ってきておりません。是非、会場に足をお運びになられるかクリス・ジョーダン(Chris Jordan)さんのサイトをご覧下さい。
インターネット上で見かけて非常に気になっていたこの活動。私も参加しようかしら。
The Huffington Postでの紹介→http://www.huffingtonpost.jp/2016/01/05/seabin_n_8917546.html
ゴミを自動収集する「Seabin」→https://www.indiegogo.com/projects/cleaning-the-oceans-one-marina-at-a-time#/
あまり展覧会などの事をブログに書くことは無いのですが、衝撃を受けたこと等から書かせていただくことにしました。
西陣の金襴のはなしではありませんが・・・
醜いプラスチックのゴミを大量に見せただけでは、その恐ろしさを分かってもらえないのなら、私はそのゴミを使って何か自分が美しいと思うものを作り出す努力をします。ただ美しいだけのオブジェではなく、もう一度人の役に立つ実用的なものに変えましょう。これは物を作ることを仕事にしている私の小さな抵抗です。
ヨーガン・レールさんの言葉が私に沁みました。4.23 Sat.-5.22 Sun. 水曜休 10:00-18:00なので今週末で終わってしまいますがどうぞ、ご覧いただけると私も嬉しい。