繊研新聞 2017/12/12 一面掲載

繊研新聞一面掲載から考える、金襴の「用途開拓」という仕事

2017年12月12日付の 繊研新聞 に、当社・岡本織物の取り組みを掲載していただきました。

繊維業界紙の一面という場で、西陣織、そして金襴という素材が「用途開拓」という文脈で取り上げられたことは、当時の私たちにとって大きな出来事でした。

一面で語られたのは「挑戦」ではなく「仕事」

記事では、当社が金襴を、神社仏閣や伝統用途だけに留めず、ファッション、バッグ、インテリアといった分野へ展開していく動きが紹介されています。

けれど私たち自身の感覚としては、それは「新しいことへの挑戦」であると同時に、仕事として金襴を織り続けていくために必要な判断でした

私たちはまず第一に、「既存の金襴の納品先である寺社仏閣以外に、『楽しい』とワクワクできる仕事をしたい」という気持ちで販路開拓を始めました。

その後、西陣織の需要が減少するなかで、
・何を織るのか
・どの分野と向き合うのか
・どの規模感で仕事を成立させるのか

それらを一つひとつ考え直す必要がある局面が訪れました。

金襴という素材が本来持っている柔軟さ

記事では、唐花、雪輪、葉脈、水玉など、現代の生活空間にも取り入れやすい意匠についても触れていただいています。

金襴は「格式が高い」「特別な場の織物」というイメージを持たれがちですが、本来はその時代ごとの感覚や外来文化を取り込みながら、姿を変えてきた織物です。

1000年以上続く西陣の歴史の中で、金襴は決して固定された存在ではありませんでした。

一面で紹介された内容は、そうした金襴本来の性質を、現代の文脈で捉え直したものだったと感じています。

小ロット対応という「現場の選択」

当社では、約5mからの小ロット対応を行っています。
これは効率だけを考えれば、決して合理的とは言えません。

しかし、
・デザイナーと試作を重ねる
・空間や用途に合わせて調整する
・素材の可能性を探る

そうした仕事の進め方には、この規模感が必要でした。

一面掲載の記事の背景には、こうした現場の選択の積み重ねがあります。

記事を読んで、こちらが学んだこと

掲載後、改めて記事を読み返して思ったのは、記者の方が、私たちの話を非常に整理された形で受け止めてくださっていた、ということです。

自分たちでは当たり前すぎて言語化できていなかった部分が、「用途開拓」という言葉で、的確にまとめられていました。

メディアに取り上げていただくということは、評価される場面であると同時に、
自分たちの仕事を外から見直す機会でもあるのだと、この掲載を通じて強く感じました。

これからも「未来に向けて続けていくための織物」を

一面に掲載されたからといって、仕事の内容が変わるわけではありません。

私たちはこれからも、西陣の分業の中で、絹糸と箔と織機に向き合いながら、仕事として成立する金襴を織り続けていきます。

この掲載は、その途中経過の一つです。

繊研新聞 2017/12/12 一面掲載
繊研新聞 2017/12/12 掲載

岡本織物(京都市 岡本圭司社長)は京都・西陣の伝統織物である金襴で、用途開拓を本格化する。ファッション衣料やバッグ、インテリアなど多様な分野に向け、国内だけでなく、欧米市場も視野に販売する考え。

同社は100年以上続く金襴織物の老舗で、現社長で5代目。絹糸と金、銀箔糸などを用いたジャカード織物は神社仏閣の衣装や戸帳、茶道具などに使用されてきた。

高級織物として知られる金襴の需要が減少するなか、同社は2年前からオリジナル柄を開発、国内のテキスタイル点等に出展して市場の開拓を進めている。自社内の手機を中心としたジャカード織物は70cm巾。1日に手機なら30cm、力織機でも数メートルしか織りあがらない。手間ひまをかけた職人技術が持ち味だ。立体的で緻密な高級感と、光の当たり具合で華やかさも清楚さも表現できる光沢などが話題を呼び、欧州デザイナーとの協業でバッグやドレスなどに商品化され、販売されてきた。

これまでに開発したのは唐花、雪輪、バラ、葉脈、独楽つなぎ、水玉など、現代生活に違和感無く取り込める約30柄。全て5mから販売する小ロット対応も実現、柄の別注にも応えながら新たな市場との取り組みを広げ受注を拡大する。岡本絵麻専務は、「1000年続く西陣で、金襴はその時代時代に世界各地のデザインを取り込んで成長してきた。今また新しい成長をとげていきたい」と話す。

写真について(追記)

玉虫の緞子地
撮影:MTRL KYOTO田根佐和子氏 
素材の持つ光の変化を、丁寧に捉えていただきました。

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