京都西陣の西陣織 金襴屋の西陣岡本のブログを読んでくださる方々、ほんまにどうもありがとうございます。
大阪、万国博覧会場跡にある国立民族博物館に行きました。
こちらは常設展示もいつも素晴らしくて、良くぞここまで収集して整理しているものだ・・・と関心しきりです。民俗学と言えば「神と死生観」を掘り下げる事になると私は思っています。なので陽気に見える展示物もちょっと子供には怖かったり。
その「国立民族博物館」愛称「みんぱく」で世界の織機が集合すると聞きました。
夫婦で西陣織に携わる身としては行かねばなるまい!
家のコルクボードにしっかりフライヤーをさして予定の日を待ちます。
学生時代から織るのが大好きで、今は伝統織物の西陣織をしているとあっては行かねばなりません。
エントランスは巨大筒織。
これ、大変だったんだろうなあ。
みんぱくミュージアムパートナーズ(略称:MMP)の「MMPかわら版」に「織りのからくり体験中! 10」にこのエントランスの事が載っています。
後日追伸:MMP瓦版に私たちが見学に行ったときのことが紹介されました。ありがとうございます。
9月13日からの開催で、ワークショップとして日々継続製織中です。ワークショップは他にも面白そうな物が沢山あります。訪れた日はスピンドルで原毛を紡ぐというワークショップをしてはりました。スピンハウスポンタさんがきてはりました。子供が「したい!」と言ってましたが「要申し込み」ですでに時遅し、今度お母ちゃんが教えてあげる、という事で諦めてもらいました。子供にスピンドルさせたいなあ。昔は歩きながら糸を紡いでいました。
展示室の中に入ると、テーマが書かれたタペストリーと言うか、簡易壁面と言うか、それ自体が荒いけれど織になっています。
そうして展示を区切っているのは糸たち。
糸が整然と二階と一階に渡っていてそれがなんとも美しい。
この難しそうな展示室をとても素敵に演出しています。
写真撮影は禁止で軽く画像を検索してみましたが無いようです。
雑誌SPINUTSを発行してはるスピンハウスポンタさんが取材などもしていらして、ポンタさんのブログに写真がありました。
http://www.spinhouse-ponta.com/sb/log/eid367.html
熱い問題提起をしてはります。
(雑誌SPINUTSは「羊と紡ぎの情報誌」と銘打っていますが繊維全般、面白い事が沢山掲載されています。今月号の表紙はポンタさんのところの羊の石鹸(この石鹸がまた素敵。羊の毛の油を使った石鹸で、持続可能、サスティナブルな資源です)をフルーツカーヴィングのスペシャリストが羊模様にカーヴィング。あまりの美しさに購入。まだ読めてません・・・。)
一階には東南アジアやアフリカの各種織機が展示してあります。
「原始機」です。体を使って織る機、簡易的な枝などを組み合わせて織る機、すごくインナーマッスルが必要な足機、腰機、芯機、弓の様な弓機、杭を打ってテンションを保つ杭機、錘を使う錘機、枠機、分類するのも大変なくらいの織機があるんですね。すごいです。
これらは「吉本忍先生(1970年以来、世界各地の織りや染めの現場で、染織文化や染織技術の調査・研究をおこなっています。)」が40年かけて集めたものたちです。
素晴らしい収集量です。
あれらを収納していた状態から組み立てて展示するなんてとても苦労の跡が垣間見えました。
織物は経糸に緯糸を通すという繰り返しで織りあがります。
経糸にテンションをかけて織るから織れるのだと私は思っていました。
私の個人的趣味で織っている簡易機、カード織り、組紐、なども全て経糸を引っ張り、テンションをかけて織っていきます。
しかし、この展示の中では経糸に全くテンションのかかってない状態の機がありました。
経糸がブラブラしています。不思議!!どうやって織るんだろう。
もしくは経糸の整経がものすごい!
言葉で書くのは難しいです。
日本では経糸はなるべくテンションにむらが出来ないように、巻き取る時も綺麗に巻き取る努力をします。
しかし!「なぜこんなふうに整経するの?もう少しまっすぐ出来ないのかしら!!」と不思議に思うことばかり。
「機」自体も、もう、自由。フリーダム。
更に不思議なのはとてもフリーダムな機なのに、まっすぐな織物が織れている事です。
私なら無理です・・・。
絶対耳とか端のほうとかヘロヘロな織物になるに違いありません。
とても不思議な機が多いのですが使用している状態を説明する映像も流れています。
それを見てやたらと感心。
何箇所か織物体験コーナーもあります。
お子さん連れの方にも楽しいと思います。
二階には「異形の織物と織機」、「わらや縄素材の織物と織機」「アイヌの織物と織機」、「日本の織物と織機」
異形の織物、面白いです。投石器なんて織れそう。でも石を投げるためのものだから私なんかシンプルに織りたくなりますが、織り柄の可愛い事!織っていた経糸に更に新しい経糸を直角方面に増殖させていくという織り方があったのですが、ものすごく面白かったです。私も織ってみたい!
そしてその熱いアンデス地帯をすぎ、アイヌの質実剛健な美しい布を見て、日本コーナー。
今までフリーな機ばかり見ていた目に優しく入ってくる日本の織機。
もう、柱がきっちり四角くてどこもかしこも直角です。
ものすごく落ち着きます。私ってやっぱり日本人。
日本人ってまっすぐ。きっちりしています。
展示品についている作品説明映像が面白かったです。
ミュージアムショップで売ってないかと思いましたが売ってませんでした・・・。
特別展を抜けて本館にも織機の展示スペースがありました。
初期のジャカード織機や、「トヨタ」の豊田佐吉氏が開発した自動織機などが展示されていました。・無停止杼換式豊田自動織機(G型自動織機)(日本機械学会様)
織物といえば、身にまとっている服などの布を思い浮かべてしまいますが、織物は色々な物に使われています。
繊維を織ることで丈夫になるから。
新石器時代の遺跡からは土器や石器製のつむぎ車が発見されています。
これにより当時から糸を紡いで織ったり編んだりしていたことが想像されます。
織るって素敵。
織屋の視線ではなくて純粋に「織が好き」という日本人、西陣織に携わる者の感想でした。