西陣からこんにちは

西陣からこんにちは ~ vol.3 布について 2 

こんにちは。西陣織を織っている〈西陣岡本〉です。

今日は、先日書いたブログ「西陣からこんにちは ~ vol.3 布について 1」の続きについて書きます。

前回は主な布地の種類の説明で終わりました。布には「織物・編み物・不織布」があります。

弊社の織っている「西陣織」は手機と力織機の(シャトル織機)での製織ですが、世界にはいろいろな形態に発展した織機があります。今日は布を織るための「織機」について書きます。

織物とは

織物とは経糸(たていと)・緯糸(よこいと)で組織された布地で組織の基本は「平織・綾織・朱子織」。

織物は一般的には織機で製織されます。織機に経糸(たていと)を張りその間に緯糸(よこいと)を通して織ります。この緯糸をどのような順番で経糸に通すのか、どんな糸で織るのかで布地の基本的な性格が決まります。

色々な織機

人力織機

経糸おもり機(垂直織機)

立てた二本の棒の間に水平に渡した棒からたくさん経糸を垂らし、それぞれの経糸(または経糸の束ごと)に石などの重りをくくりつけて地面まで届くように張った織機。カーペットやじゅうたん織などで今でも使われています。

https://www.rugsrang.com/post/2018/04/27/%E3%83%8D%E3%83%95%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%B3

地機(水平織機)

経糸は二本の棒(布巻き取り用と経糸固定用のビームになっていく)に固定され、地面近くの高さ張られます。二本の棒は地面に打った杭に固定され、小さな機でも長い布を織れるようになりました。初期は地面近くに張られた経糸の上にかがんで作業をする必要があり(ground loom)、織りやすくするために下部に浅い穴を掘った機(pit loom)が生まれ自然な高さで作業することができるようになりました。こうした機は中国やインドで数千年前から使われています。

カレン族の「腰機(こしばた)」の機織りhttp://orijin.asia/ethnic/karen/weaving-2/

腰機・いざりばた・バックストラップ織機

2本のビームがある機機。ビームの一方を織る人の腰帯で固定、もう一方の経糸を巻いたビームはさまざまなところに紐で縛って固定するタイプの織機。綜絖の代わりに、四隅に穴をあけた紙を使いその紙を回転させることで綜絖の代わりにするカード織機などもあります。

簡単に作る事が可能で、自宅でも気軽に織物をすることが出来ます。

日本では、北海道のアイヌ「アットゥシ織り」・沖縄県うるま市「伊波メンサー織り」・八丈島の「カッペタ織り」などが有名です。

日本の足踏織機(1914年)https://www.wikiwand.com/ja/%E7%B9%94%E6%A9%9F

足踏織機

経糸に緯糸を通すために、綜絖枠(そうこうわく)のある織機。綜絖枠には綜絖(そうこう)が吊られています。綜絖は糸製や金属製の器具で、経糸の通る「目」がありもつれないよう固定され、綜絖の上下により経糸がそれぞれ上下して緯糸が通る隙間を作ります。また綜絖と下のシャフトを組み合わせ、上げ下げの法則を変えることで、さまざまな織り方ができます。シャフトは足踏みのペダルで上下するようにし、より織りやすく改良されています。

動力織機(動力をもつ織機を動力織機(力織機)という)

1785年にイギリス人エドモンド・カートライト(Edmund Cartwright)氏が最初の動力織機を製造。エドモンド・カートライト氏はノッティンガムシャー生まれでオックスフォード大学ユニバーシティ・カレッジを卒業したイギリスの牧師・実業家・発明家。イギリスの産業革命に貢献しました。

ドビー織り機構のある1890年代の織機。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%89%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88

動力織機は進化を遂げています。素材・産地などによって細かく分化しているので代表的な機械織について書きます。

シャトル織機(有杼織機)

手織りでシャトル(杼)を使うように、シャトル・筬打ち(おさうち)などを機械で自動に織る織機。シャトルが左右に往復しながら糸を織り込みます。用途は万能。振動・騒音がひどく高速運転が難しく低速で製織します。

ジャカード機を乗せていたり、ドビー織機だったりいろいろな織機があります。

弊社の西陣織はジャカードを搭載したシャトル織機で織られています。

西陣岡本 力織機(シャトル織機)https://okamotoorimono.com/
グリッパー織機

緯糸をつかんだ金属製の小型グリッパーシャトル(小さな鉄片)を飛ばして織る。緯糸を確実に遠方まで 飛ばすことができるので、幅の広い織物に適しています。綿・毛等が良く織られています。織物汎用性は高いですが、騒音が発生し高速運転に限界があります。単品量産型の織機となります。

小泉製麻ブログよりhttps://www.koizumiseima.co.jp/column/2012/10/blog-pos-72/

シャトル織機とレピア織機の耳の違いhttp://shikenjyo.blogspot.com/2013/06/blog-post.html

レピア織機

無杼の織機。シャトルレス織機。

両側からレピアが挿入するバージョン

剣(レピア)と呼ばれるレピアヘッドが緯糸を掴み中央まで運び、右のレピアがその糸を受取り、右端まで持っていく作業を繰り返しながら糸を織り込んでいきます。

片側から全幅でレピアが挿入するバージョン

レピアヘッドが織機の片側から杼口全幅にわたって貫通して緯糸を入れるタイプです。

エアジェット織機

無杼の織機。シャトルレス織機。

空気を噴射する力で緯糸を通す織機。天然素材などさまざまな糸に対応でき、安価な布の大量生産を行う工場で導入されています。

以下の動画はトヨタ産業技術記念館にあるエアジェット織機について

ウォータージェット織機

無杼の織機。シャトルレス織機。

緯糸を水の噴射力を使って挿入して織る。緯糸は、4mもの長さを水平に進むことが出来ます。一分間に1000回
以上の噴射が可能で新幹線並みのスピードになる場合があるそうです。

用途は、ナイロン、ポリエステルなどの水を吸い込まない疎水性の合繊糸・フィラメント糸の織物を製織出来ます。

以下の動画はトヨタ産業技術記念館にあるウォータージェット織機について

織機は大きく分けて「人力」「動力」の2つがあります。

トヨタ産業技術記念館で色々な織機を拝見してきました。

この織機に加えて「編み物」「不織布」等、多種多様の布があるこの世界。私たちが身の回りで使用している布地はどのように作られたものなのか考えてみるのも楽しいです。

今日はこれまで。最後までありがとうございました。

西陣からこんにちは ~ vol.1 西陣織 を織る一家のお話

西陣からこんにちは ~ vol.2 西陣織とジャカード織機について

西陣からこんにちは ~ vol.3 布について 1

ブレイクタイムに西陣織の品々をご覧いただけたら嬉しいです。西陣岡本オンラインストア

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