「西陣織」とは

西陣の織屋、岡本織物株式会社です。
今日は「西陣織」と他の織物の違いは?という質問を頂いたのでそれに対する答えを書きたいと思います。
結論を申せば「西陣織工業組合」に所属している織屋で織った「先染め織物」が西陣織です。

「西陣」と「西陣織」は「西陣織工業組合」の登録商標。

西陣織工業組合 証紙
西陣織工業組合 証紙

「西陣」と「西陣織」は「西陣織工業組合」の登録商標です。
「西陣織工業組合に」に所属している織屋で製織された高級先染め絹織物の総称であり、特定の織物を意味するものではなく、生産される織物の種類は多くなります。

西陣織ができるまでに色々な職人の技術が必要です。

企画・図案から意匠、紋紙、糸染、糸巻き、整経(セイケイ)、綜絖(ソウコウ)、金銀糸、絣加工等多くの工程があります。

その他材料関係→糸屋(糸屋でも絹に特化している、綿に特化している、化繊に特化しているなど分業)、機業屋(織機全般に必要な道具を扱う)織り上がった物の整理→染み抜き、かけつぎ、糊張り、ゆのし、等々多岐にわたります。

西陣織

爪掻本綴織、経錦、緯錦、緞子、朱珍、紹巴、風通、もじり織、本しぼ織、ビロード、絣織、紬の12種類が国に指定されています。

弊社の伝統工芸士
弊社の伝統工芸士

爪掻本綴織

爪を筬にして色糸を織り込んでいく紋様を自由に織れる織り方。
帯地、その他色々な物に加工されています。
爪掻ではない「綴れ織り」は緞帳などでも使われています。

西陣織 爪掻本綴織 奏絲綴苑
西陣織 爪掻本綴織 奏絲綴苑

西陣織 爪掻本綴織 奏絲綴苑

経錦

経糸によって、地の文様も織り出されている錦の事。帯地、その他色々な物に加工されています。

蜀江錦帯など有名なものも多数あります。

https://emuseum.nich.go.jp/detail?langId=ja&webView=&content_base_id=100643&content_part_id=0&content_pict_id=0

緯錦

彩糸を緯糸として紋様を織り出した織物の事 ← 弊社の主力の織物はこれになります。

Swallow Arrow

緞子

サテンの事。

Silk Satin Donsu Drop

朱珍

緞子よりも組織点が少ないのでより美しい織物の事。

紹巴

経緯ともに強撚糸を用い、細かい横の杉綾などの地紋の織物の事。

風通

袋織り、二重織物、三重織物の事。

もじり織

主に夏物が多い。経糸をねじることで緯糸と緯糸との間に隙間を作る。弊社ではこちらも織っています。

本しぼ織

経糸緯糸共に強撚糸に糊をして固定した物を織り、製織後に糊を落とし、布全体にしぼを出す織物の事。

ビロード

特有の羽毛や輪奈をつくるため横に針金を織り込み、後で針金の通った部分の経糸を切って起毛したり、引き抜いて輪奈を作る有線ビロードの事。

日本天鵞絨工業株式会社 有線天鵞絨 ビロード
日本天鵞絨工業株式会社 有線天鵞絨 ビロード

絣織

糸を防染して経糸、緯糸にし、模様を表したもの。経絣、緯絣、経緯絣、の3種類がある。

いとへんuniverse 西陣絣
いとへんuniverse 西陣絣

真綿を手紡ぎし、経糸、緯糸にして織り上げた物の事。


西陣織工業組合には以下の3部門、5部会があります。
工芸織部門:帯地、きもの、室内装飾織物、
金襴織部門:金襴、
洋装織部門:ネクタイ、肩傘

西陣織工業組合組合員数—http://www.nishijin.or.jp/site/material/gaikyo_h26.pdfより参照

昭和50年 1530
平成2年 1159
平成5年 1059
平成8年 967
平成11年 824
平成14年 688
平成17年 606
平成20年 501
平成24年 447
平成25年 411
平成26年 391

西陣の分業制について

西陣には数多くの分業化された専門業種があり、それぞれが能力の限りを尽くして自分の部署の仕事をこなしている。この社会的分業制度の発達している西陣において、その中心となるのは製織段階を受け持つ「織屋」である。 西陣織の生産システムは、総合芸術であるとよくいわれている。つまり、織屋の主人は、織る工程にいたるまでの各種の準備工程、図案家、意匠紋紙業、撚糸業、染色業、整経業、綜続業などを、それぞれ動員して、ひとつの織物を生み出していくことになる。西陣の織屋が商品生産者の厳しい競争社会の中にいるということである。昔から、「西陣の織屋で三代続いているところはあまりない」「織屋とできものは大きくなったらつぶれる」とよくいわれてきているが、それはこの総合芸術を生み出すシステムが、個人の能力として、また規模の上で、自ら限界があることを示している。しかし、能力の限界を越えて分業による制度が西陣を支える機能を果たしてきたといえよう。

http://repository.tokaigakuen-u.ac.jp/dspace/bitstream/11334/57/1/kiyo_002_04.pdf

弊社の手機を織る手順

  1. 外国生糸(主にブラジル、中国)、国産生糸を西陣の中の糸屋さんから買います。
  2. 生糸は撚糸に出されます。
  3. お客様と相談して紋意匠(デザイン)を考えて絵を描きます。これには専門の絵師がいます。絵師さんのいる図案屋さんは日本画と間違えるような美しい意匠を描いてくれます。
  4. その絵を織る為に紋紙というデータにします。現在実際に「紙(パンチカード)」を使っているところは少ないです。弊社では紋紙とFD・USB・SDカードを紋紙の媒体として使っています。
  5. 糸を染める為に染屋さんにだします。
  6. 染めた糸を製経屋さんにだします。(経糸の長さをそろえてドラムに巻き取ってくれる仕事)。
  7. 経継をします。会社によっては経継さんに頼むこともあります。
  8. 染めた糸のかせを緯糸用に木枠に巻き取ります。弊社では自分で巻き取りますが場合によっては外に出している所もあるかもしれません。
  9. 木枠から管というものに糸を巻き取ります。(杼にいれる緯糸をつくる)。
  10. 製織
  11. 検反

織物の道具屋

  • 綜絖屋
  • 杼屋
  • 各種織機系道具屋
  • 木枠・管屋
  • 撚糸屋
  • 巻き屋
  • 糸屋
  • 染屋
  • 製経屋
  • 経継屋
  • 図案屋
  • 意匠紋紙屋 等

都の文化人を織物の面から支えてきた西陣には、人も物も集結してくるので、それぞれの道のプロが生まれて、個々の技を磨き、その技を集約して最終形態である「織物」へと昇華する事が出来ました。
西陣にこれだけ多種の高級織物が存在するのは分業制のおかげです。